2017年映画 ベスト10

おことわり

 今さら臆面もなくお届けする2017年映画ベストですが、まずは「ベスト」の基準についてお話ししておきます。要するに「何故この10本でなければ行けないのか」というどこまでも根本の話です。この10本の映画、単に「面白い」順に並べたわけではありません。かと言って「好き」順でもありません。面白い映画ベストなら、どっかの映画雑誌なりなんなりを開けば見られるでしょう。好きな映画ベストも、自分の好きにイマイチ自信が持てない私としては、いつまでも決められずに年が暮れてしまう可能性があるのでやめました。言ってしまえば、このベストは私が「えこひいきしたい」と思った映画ベストです。一番面白いわけでは無いかもしれない、かと言って一番好きでもないかもしれない、でも情が移ってしまったので捨てるに捨てきれない感じで私の心に残り続けている映画。そんなの10本並べてみました。とはいえ普通に面白くて好きな映画もあるんですが、まあ基準としてはそんな感じ。

 

 

【10位】カンフー・ヨガ

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 ジャッキー映画に造詣が深くない私にとって、展開のあまりの雑さと陽気さに大きな文化的ショックを受けてしまった映画です。ジャッキーが考古学の権威であるという設定のジャブから始まって動物、ギャグ、カンフーのてんこ盛り。目のごちそうというか、ひたすら愛でたい目出度い引き出物のようなありがたさが画面に迸っています。特にインドと中国の友好を願うような展開からの、唐突に降臨する桃源郷のようなラストを私は一生忘れないでしょう。嗚呼まぶたを閉じればジャッキーの笑顔と踊りだけがよみがえる、そんな素敵な映画です。あと、どうでもいいんですけど動物が兎に角いっぱい出てくるのはジャッキーの趣味なんでしょうか。

 

【9位】打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?

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 結構あることと思いますが、苦手だろうなという映画を見に行って、思いのほか良かった時の好感度がとてつもなく上がる現象の好例。90年代初頭のドラマ(映画)を下敷きにしながらも、あまりノスタルジーに寄らなかったのも良かったと思う。あと個人的に最近のアニメや映画の「エモさ」表現に安易さを感じることもあったので、こういった子供の幼稚さ、愚かさをキッチリ描いてくれたのも好印象です。テーマとしてやっぱり古臭いけど、自転車、プール、待合室など絵的に見せるところは見せていくし、最後は「未来」を予感させる終わりにちゃんとなっていく。子供という不確かな時期の記憶を焼きつけるような映画は、少年少女がいる限りは、残っていて欲しいと願ってしまうのです。

 

【8位】人生フルーツ

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 丁寧な生活というものをカメラで切り取っていくと、それだけで豊かな映画になってしまう。ということ。一人の人間のうちにこれほどの愛と悲しみと夢が詰まっているのか、決してカメラに映りえないものまで、この映画はうっかり映してしまったのではないか、スクリーンを見ながらひそかに慄きました。ラストシーンは『風の谷のナウシカ』のようにしたかったという製作者の言葉。ドキュメンタリーとして撮られた、とても優れた「物語映画」です。

 

【7位】トンネル 闇に鎖された男

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 ペ・ドゥナが出ているので7位。

 

 だけでなくボロボロにされる運命を背負ったハ・ジョンウがボロボロになっていく様を見てるだけで辛くて楽しいし、愁嘆場も見せ場も特撮もガンガン盛っていくぞという近年の韓国映画の強みをこれでもかと叩き付けられる。閉所パニックものは数多の先行作品があるので、色々と工夫してみせていかなければならないところ、この映画の場合は、現政権や社会体制に目が向いている所が興味深いです。韓国のソーシャルパワーを思わせる。でもまあ、ペ・ドゥナが出てるのでどうしたってひいきします。

 

 【6位】HiGH&LOW THE MOVIE2/END OF SKY HiGH&LOW THE MOVIE3/FINAL MISSION

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  ハイローをえこひいきしていない人っているの? いや、そう言うと怒られるかも知れないですが待ってほしい。ハイローは決して「出来の良い映画」では無いです。でも、熱い台詞に熱い展開、そしてなりより熱い戦いの数々で魅了された観客たちの「推したい」「こいつらをもっと見たい」という熱い気持ちが、ここまでのムーブメントを起こしてきたのではないかと思っているのですよね。まずもって「誰を推すか」という所がハイローの入り口というのもありますし。そう、そういう意味でいくら下駄をはかせても足りないくらい素晴らしい作品だと、自信をもって言えるのであります。個人的に青春の決着を描いたザム3も含めてベスト。推しは鬼邪高校です。

 

【5位】ハードコア

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 「こういうジャンルの映画なのかな」とある種見くびって観賞してしまって、ものの見事にノックアウトされた怪作。ゲームに興じて育った人間を肯定してくれるような面もあって、ああ、あの時一緒にゲームした友達、いまはどうしてるかなという感傷的な気持ちにもなりました。人生というゲームには2Pプレイもある。

 

【4位】ローガン・ラッキー

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 見終わった直後の直観は「化学方程式を眺めているうちにいつの間にか詩になっていた」みたいな感覚。映画の魔法。こういう人間がいてこういう家族がある、職業があるから、泥棒がいる。化学式があるから爆弾がある。この世界の成り立ちを映画という影から裏写ししていくように。そしてウェストヴァージニアといえばのあの歌、あれがみんなに少しずつ広がっていくのが、まさにこの映画だなと。先のない未来でも、「みんな」で一緒になんとか進むしかないのです。

 

【3位】希望のかなた

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 本当にえこひいきしたい映画はあんまり語ることがないのです。人間を人間として扱うという、ただ当たり前の事と、それに逆行するかのような現実を思い、グッと心の扉を掴まれました。カウリスマキの映画は常にメランコリックな画面なのに(だから?)所作の一つ一つに血が通っているようで、見るたびに私も生まれ直したような気持ちになります。

 

【2位】スプリット

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 シャマラン、あなたって人は……。

 

 

 

 

【1位】ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章

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 えこひいきベスト・オブ・ザ・イヤー。映画として見過ごせない瑕疵もある作品だと思いますが、そんなの全く関係ない。問題にならない。原作の大ファンとして私は断言するけど、こんなに原作の「核」を大切にしている映画化ってないですよ。第四部からということでジョースターの血統をくどくど描かず、「東方家の血統」で受け継がれる正義を描こうとしたことも、アンジェロ・形兆の合わせ鏡のような関係も、恐れずに行った改変が全てはまっています。何より、この映画、製作者と三池さんが「原作を超えよう」という気持ちで作ったように思えてならなくて、それが人生捧げた漫画のファンの自分としてはとても嬉しかったのですよね。何故ならジョジョとは挑戦と勇気の物語なのだから。何かと難しい実写化の問題ですが、原作の精神をアップデートしてくれる映画ならば、どこまでも歓迎していきたいものです。三池さん、スタッフの皆さん、役者のみなさんの勇気に、私は敬意を表します。でも企画考えた奴は許しません。

 

 ところで『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章』DVD、BDは3/23発売だそうなので、ジョジョファンでまだ見てない人がいれば見ればいいじゃない。私は妹と周囲のジョジョファンに買って配ります。だって三池監督の撮る吉良喜彰が見たいから!

 

 

2017年映画ベスト

10位『カンフー・ヨガ

9位『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

8位『人生フルーツ』

7位『トンネル 闇に鎖された男』

6位『ハイロー ザム2、3』

5位『ハードコア』

4位『ローガン・ラッキー

3位『希望のかなた

2位『スプリット』

1位『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章』

 

『けものフレンズ』11話  壮大でちっぽけな旅の終わり

 

 

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 けものフレンズ』11話までのネタバレをしています。

 

 いま『けものフレンズ』というアニメから目を離せないでいます。世間の一部では話題になっているようですが、なぜ流行っているのか、その理由は誰も分かっていないよう。私自身、なぜこんなにもこのアニメが心の奥にドシンと居座ったまま、離れてくれないのか非常に気になっています。「ヒトが滅びた後の世界」のヒトの象徴たるかばんちゃんと、「サーバルキャットの人間化」であるサーバルちゃん、二人の絆と旅の物語。そう思うと、昔から良くあるパターンの話と言えるかもしれません(『指輪物語』などのように)。

 この二人の関係性が素敵です。ネットを覗くと、二人のファン絵が多く見られますが、サーバルちゃんが「猫的」にかばんちゃんに甘えたり、抱きついたりと「いかにもな」構図が多いですが、公式アニメでは二人がそうして仲良くしたり、スキンシップをしたりなどの描写はほぼありません。どちらかというと、「ただ傍にいる」「同じものを見ている」という横並び的な二人のたたずまいが私は真っ先に思い浮かびます。そう二人はヒトとペットでは無く、対等な「友達」なのだから。そんな妙な距離感と、それでいて確かに二人の間にある結びつきの強さが、見ていて「心地よさ」を感じる理由なのかもしれません。そしてそれは、製作者が視聴者を「これぐらいの描写があれば関係性を読み取ってくれるはず」という信頼している証でもあるように思えて、見ているこちら側の背筋もピッと伸びるような気持ちになります。

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◆11話「決意と足跡」

 そんな二人の関係に焦点を電撃的な形で当てたのが11話でした。11話「せるりあん」ラストの衝撃が凄まじすぎて、多くのフレンズを苦しめているようです。私としても凶悪な中毒ドラマ『ブレイキング・バッド』のシーズン3のラストに比肩するダメージを食らってしまいました。

 ただ、この11話はそれ以上に重要なことが描かれていました。それは「かばんちゃんの旅の終わり」です。かばんちゃんはここまでずっと「何のために生まれ」「何をする生き物なのか」知るために旅をしてきました。例えばサーバルちゃんは図書館に行ったことがないのに、自分が「サーバルキャットのサーバル」であることを知っています。

かばんちゃんは何も知りません。「ナワバリは?」と聞かれても答えられません。「ナワバリが思い出せないなんて、大変ですね」と、ジェンツーペンギンのジェーンにも言われます。「ナワバリ」はジャパリパークの住人にとって、とても大切なものです。自分が何者か、ナワバリはどこなのか、人間の思春期の問いと、かばんちゃんの旅はどこか似ている気がします。ただ、このアニメはナレーションも、モノローグや心理描写も全くないので、かばんちゃん自身がそれをどう抱えてきたのか、それがはっきりと分かのはなんと11話までほとんどありません。そして、その問に対する思いがあまりにも深く、重くかばんちゃんの心をとらえていたという事実こそ、私が11話で衝撃を受けた本当の理由です。そして、11話のもう一つの衝撃がアライさんの存在でした。

 

◆アライさんが運んで来たもの

 二週遅れで常にかばんちゃんとサーバルちゃんを追いかけて来たアライさん、フェネックさんですが、この11話でついに追いつきます。(どうでもいいですが、この登場のシーンで二人の紹介文演出が初出だというのとてつもなくクールだと思いません?)。

物語上の役割で言えば、アライさんはパークガイドの帽子飾りの片方を持っていて、それが「四神」の在処を引き出す鍵なのですが、一方でかばんちゃん達の旅の「証人」でもあります。表面上、パークガイドの帽子の欠けた部分が戻り、かばんちゃんが暫定パークガイドとして認められたように見えるこのシーンですが、「旅の証人」であるアライさんがこれを渡すことによって、ジャパリパークに残して来たかばんちゃんの足跡が、いま立っている場所にしっかりと繋がっているように感じ取れます。

 ジャパリパークにかばんちゃんが刻んだ様々な思い出があるからこそ、アライさんの「かばんさんは偉大」という発言があったからこそ、その積み上げが(かばんちゃん自身の思いはどうあれ)「ぼくはお客さんじゃない」という言葉の重さにしっかりと繋がっているのです。11話分の思いと記憶。ここまで伏せておかれたかばんちゃんの内面に、そんな気持ちや願いがあったというという驚き。すべてが結実したシーンでした。太古の知恵を持つボスと、自分の足跡を知るものに見守られ、かばんちゃんは役割を与えられる前に、歩んできた道を見据えて自らの役割を決めました。それは誕生の物語であり、放浪の旅が終わりをつげ、かばんちゃんが英雄になった瞬間でもあります。けものフレンズは神なき時代にヒトがヒーローとして誕生する物語であったと、そう解釈することも可能です。

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◆僕のナワバリ

 かばんちゃんが何の動物か、フレンズか、何者か、もちろん物語のフックとしは機能しますし、何かしら回答は得られそうです。しかしながら、物語の根幹は、かばんちゃんがジャパリパークでどう受け入れられ、その自分をどう「引き受ける」かにあるとすれば、12話でかばんちゃんの正体がわかったところで、特に何も起こらないのでしょう。

 11話でかばんちゃんがサーバルちゃんを助けるためにやった木登り。単にサーバルちゃんに教わったことの伏線という以上に、ヒトもしくはヒトの象徴であるかばんちゃんも、ジャパリパークという外の世界から、自分でないナワバリから影響を受け、与えられていたという事を示しています。クールの前半は特にヒトの知恵を使い、人間化したフレンズの問題を解決するというパターンがあって(5話は特に顕著です)、「ヒトが与えた知恵によって、ジャパリパークに変化をもたらしているのでは……」という不安が、観る者の胸にあったわけです。

 しかし、8話の「ぺぱぷらいぶ」ではフレンズ達も自分たちの力で歩きだしているのを描いていました。思えばアルパカもカフェを始めたのは自分の意思です、ジャガーも泳げないフレンズのために仕事を始めました、ツチノコは過去を知るために遺跡を調べます。タイリクオオカミは他人を感動させる力を持ち、アミメキリンはそれを受け取って自分の役割を決めました。ジャパリパークはかばんちゃんと関係を持ちながら、それだけに影響されずに、たくましく回っていく生き物の営為の宝庫なのです。「ヒトが動物に知恵を与える」という単純な、一方通行なものではなく、かばんちゃんの中にも「ジャパリパークという世界」から与えられたものがあったのです。かばんちゃんが木登りをするとき、かばんちゃんの中にはサーバルちゃんがいます。役割を決めたかばんちゃんが選んだナワバリ、居場所こそ、その心の中の大切なものです。

サーバルちゃん…見るからにダメで、なんで生まれたかも分かんなかった僕を受け入れてくれて、ここまで見守ってくれて…  

 

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 小さな英雄は、きっと旅の終わりに自分のナワバリを見つけたのでしょう。

 

 

 さて、今日(3月28日)は最終回当日です。かばんちゃんとサーバルちゃんがどうなるか、私はどんな形でも受け入れる気持ちでいますが。やはり、やはり二人の笑顔でおわって欲しいと、そんな思いを抱えながら、放送を心待ちにしています。